野球版働き方改革「現役ドラフト」って何だ?

野球版働き方改革 現役選手ドラフトって何だ? プロ野球

日本プロ野球いよいよ「現役選手のドラフト会議」が実施される以降というニュースが出ましたね。

世の中一般人の私たちの周りでは「働き方改革」という言葉を良く耳にするようになってきました。どうやら日本のプロ野球という特殊な世界においてもそういう流れがきているようです。

各人材が適材適所でよりパフォーマンスを出せるところに行きやすい仕組みを作っていこうよ、って流れですね。

でも、そもそもプロ野球選手って「個人事業主」みたいなもんなんだしそんなの必要?なんのために必要なんだっけ?という人も多いはず。

今日はこの【プロ野球現役ドラフト】をテーマについて私見を大いに含みながらまとめてみましたので暇な人はお付き合いください。

「現役ドラフト」が必要か。

結論からいくと個人的には「現役ドラフト」は賛成です。

やっぱりプロ野球で活躍するってみんな憧れるわけじゃないですか?

それなりに自分自身が幼い時から自分の時間を投資してプロ野球選手を目指している訳です。その夢は「2軍でそこその活躍をするぞ!」ではなく、「華々しく1軍でプレーして活躍したい!」って思うのが本音だと思うので。

プロという世界は競争なので、等しく扱われる事を望むのは無理な話で、そこには野球の技術だけじゃない別の相対的な要素があるのも事実だとは思う。例えば指導者の好き嫌いとか、派閥とか、指導方針がハマるorハマらないとかとか。昔、鳥谷が自由枠で早稲田から阪神にきた時に岡田監督が言ってたように。

岡田元監督は早大の先輩で、1年目の2004年の開幕戦で遊撃スタメンに鳥谷を抜てきした。リーグ優勝した03年、遊撃レギュラーには藤本敦士(現内野守備走塁コーチ)がいたが、「将来のタイガースを背負う選手。差別はしないけど区別はする」。

阪神・鳥谷、代打で今季初V撃!奇跡CSへ大声援に応えた
2019.9.23 08:17

ただそういう”自分では如何ともしがたい理由”によって限られた選手寿命がさらに削られてしまうことも少なくない。であれば志半ばでクビになるんだったら、本人が納得できるような形が取れるルートっていうのはあって然るべきなのかと思う次第です。

そもそも「ドラフト」って何よ?

ここでそもそも「ドラフト」って何?

高校生とか大学生とかを獲るあのくじ引きみたいなやつじゃないの?
「現役ドラフト」って何が違うの?

という方もいると思うのでまずはそこから棚卸しして行きましょう。

新人選手選択会議(ドラフト会議)

一般的に「ドラフト」って呼ばれるものはこの「新人選手選択会議」です。

事前に高校生や大学生はここでプロ志望届という「私はプロ野球に入りたいです!」という意思表示をしておき、それらの選手を対象として各球団が自分たちの現有戦力とのバランスを見ながら、はないちもんめ的に順番に欲しい人材を指名していきます。ここで欲しい人材が重複した場合は、お待ちかねの抽選(※)となるわけです。

ドラフトのくじ引き(2018年)
時事通信社)ドラフトのくじ引き(2018年)

※現行の制度ではドラフト1巡目は抽選がありますが、それ以降はシーズンの成績を元に決められた順番で指名してゆくウェーバー制となります。
参考URL)ドラフト会議を徹底解説。指名順はどう決まる?「ウェーバー制度」とは?

もっと簡単に言ってしまえば「プロ野球界における新卒採用&配属先決定会議」見たいなもんですね。株式会社日本プロ野球に採用(ドラフト指名)されると同時に各所属部署(球団)の配属先が決定する、みたいな感覚です。

なので自分の意思が反映されづらい状態でプロ野球選手になるということも発生します。そういう観点からいくと、選手個人の納得度というところにおいては課題を抱えているようにも思います。

ちなみに、ここでよく勘違いしやすいのが「ドラフト指名=入団決定」ではなく、あくまでも「入団してもらうための独占交渉権を得た」状態となります。
(指名されてもその球団に入団しなかった、という事例もたくさんあります。)

現役選手ドラフト(ブレークスルードラフト)

「現役ドラフト(通称=ブレークスルードラフト)」とは、現状所属しているチーム内において出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化させる制度。一般社会に置き換えれば、「有志による部署異動」に近い制度がプロ野球という世界でも導入されるイメージでしょうか。

この制度のベンチマークになっているのがチーム間移籍が活発なアメリカの制度【ルール5(ルールファイブ)ドラフト】です。

この背景にあるのが、アメリカで導入されている「ルール5(ファイブ)ドラフト」だ。これは有望な選手をマイナーで飼い殺しにするのを防ぐために毎年行われているもので、メジャー40人枠から漏れている選手の中で、18歳以下で入団した選手なら在籍5年以上、19歳以上の入団ならば在籍4年以上の選手を他球団が指名できる

飼い殺し選手を救え!「現役ドラフト」を導入すれば、どんな選手が対象になるのか【西尾典文】

日本独自のプロテクト基準を設けなければいけないし、そもそも新人選手の扱い方などまだまだ詳細に関しては詰めないといけない部分もあるけど、選手に対して色々な可能性が提示できるようになるというのはファンからしてもハッピーことかもしれません。

「FA(フリーエージェント)」という特権

でも、好きなチームに移籍できる人っていなかったっけ?と思ったあなた。

そうなんですね。一定条件をクリアすると「好きなチームに移籍できる権利(FA権)」というのを取得できるようになるんです。向こうのチームも「君が欲しい!」というオファーが前提ではあるのですが、確かに能動的に所属先を決める権利自体は取得できます。

しかしながら、このFA権取得の条件ってのが結構厳しくって。

FA権には国内球団と選手契約を締結できる「国内FA権」、海外の球団も含めていずれの球団とも選手契約を締結できる「海外FA権」の2種類がある。国内FA権を取得するには8シーズン、海外FA権を取得するには9シーズンの出場選手登録(一軍登録)日数が必要とされる。
(一部、抜粋引用:ベースボールキング)

意外と知らない?複雑なFA制度をおさらい

ざっくりではあるがそのFA権保有者率を計算して見よう。

2019年シーズンオフにおいてのFA権有資格者:「90名」(再取得者含む)
仮にプロ野球選手の全体を「12球団×支配下登録選手(最大70人)=840名」
とした場合、

FA権保有者率は「約10%」という狭き門となる。

一般社会でも自分の部署が10人いたとして異動希望自体”出せる”のは1人のみと考えるとそのハードルの高さもなんとなく実感できるのではないでしょうか。

となるとFAというのは「特権」であり、なかなか「一般」野球選手にはハードルが高いという事実も見えてくる。これならば、配属先自体(入団)は決められたまま終わっていくくらいだったら、もう少しFA以外の移籍のチャンスが欲しいと思う選手の心理も納得できる、という感想です。

「現役ドラフト」で”活躍しそう”な選手

ではこの他チームに移籍したことによって飛躍した選手入るのでしょうか?

この「現役選手ドラフト」の大きなエビデンスとなっているのが大田泰示(現:北海道日本ハムファイターズ)の大活躍でしょう。

元々は松井秀喜以来の高卒和製大砲として期待をかけられ、2006年にドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。何度か1軍定着のきっかけを掴むか!?という場面があったものの、1軍と2軍を行ったり来たりというシーズンが続き、2016年に日本ハムファイターズへトレード。

巨人(8年間):通算225試合 打率2割2分9厘、9本塁打
日本ハム(3年間):通算354試合 打率2割5分4厘、49本塁打

元々、188cm/94kgという立派な体躯での豪快なバッティングもさることながら、それに似合わず足も速く、守備も上手いというポテンシャルの塊でした。

そして環境を変える…という意味合いもあった移籍だと思うのですが、堰を切ったようにそのバットから快音が響くようになりあれよあれよという間に日本ハムファイターズに欠かせない恐怖の2番バッターに成長したのであります。

2019年シーズンにおいては、132試合に出場し、打率.289、20本塁打、77打点とキャリアハイの成績を納め、この「現役ドラフト」導入への機運を高めることになりました。

こうした”ちょっとしたきっかけ”で変わる可能性を秘めた選手を私見で何人か挙げてみたい。

藤浪晋太郎(阪神タイガース)

まず個人的に一番の筆頭候補は阪神タイガースの藤浪晋太郎。
大谷翔平と双璧、もしくは投手としてのポテンシャルはそれ以上と騒がれた逸材。実際にプロ入り後は高卒投手としては2013年の入団以降3年連続2桁勝利を達成し、このまま誰もが球界のエースに登りつめると信じて疑わなかった。

2016年の7勝を境にして、3勝→5勝と苦しみ、2019年は遂には1試合登板で未勝利という結果に終わっている。

このまま”終わってしまう選手”ではないはず。心機一転、別のチームで投げるという道筋を段取りするのも一つの野球界の育成システムではないか。

真砂勇介(福岡ソフトバンクホークス)

化ける、化けると言われて早3年。ご存知”ギータ”こと柳田悠岐の右バージョンということで”ミギータ”と命名された真砂勇介。

プロ4年目だった2016年にウエスタン・リーグで自身初めて規定打席をクリア。90試合出場で打率.295、7本塁打、44打点、18盗塁の成績を残し、さらにはその年に開催された「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」に23歳以下の侍ジャパンの一員として参戦すると、全9試合において“若サムライ”の4番打者に抜てき。

しかしその後は1軍でも巨大戦力ソフトバンクの中においてなかなかキッカケが掴めずにもがいている。こういう選手もまた何か”環境が変わること”で一気にブレイクすることがあるのではないか。

「現役選手ドラフト」のメリット

  • 選手個人の”納得度”が担保できる仕組みになる可能性を秘めている。
  • ”環境が変わる”ことによって、一気に潜在能力が開花する可能性がある。
  • ”選手個人のイノベーション(覚醒)”はファンにとってもロマンがある。

新しい制度だけに慎重な議論が続くことが予想されるが「個人がより自分のパフォーマンスを発揮できる社会へ」と向かっているこの令和の時代において、プロ野球もこの大きなきっかけを足がかりに人気回復に結びつけてもらいたいものである。